『ラザロ』のアクションが凄い理由｜リアルすぎるパルクールと“生き延びる強さ”の描き方

アニメ『LAZARUS（ラザロ）』が2025年春の話題作として注目を集めています。
その最大の魅力は、視聴者を圧倒するリアルかつスタイリッシュなアクション描写。

特に主人公・アクセルの身体能力には多くの人が驚かされたはずです。
高所を駆け、壁を蹴り、滑らかに障害物を乗り越える姿は、単なる「派手な動き」ではありません。
それは、実在する移動術＝“パルクール”に基づいた、本物の技術なのです。

本記事では、ラザロのアクションがなぜここまでリアルに感じられるのか、パルクールの技術や精神、演出の裏側まで徹底的に解説します。
アニメとしての完成度だけでなく、その裏に込められた“生き延びるための哲学”にまで迫ります。

『ラザロ』の世界観とストーリー概要

近未来2052年、奇跡の薬「ハプナ」と崩壊する秩序

アニメ『LAZARUS（ラザロ）』の舞台は、2052年の近未来。
人類は“病を克服する”夢の新薬「ハプナ」の登場によって、かつてない繁栄を迎えたかに見えました。

しかし、この薬には恐るべき裏があり、突如として全人類の生命を脅かす脅威へと変貌します。
世界は混乱に包まれ、秩序は音を立てて崩壊し始めます。

主人公アクセルと特殊部隊「ラザロ」の使命

そんな絶望的な状況の中、希望を託されたのが、特殊部隊「ラザロ」の面々。
中でも注目すべきは、超人的な身体能力とパルクール技術を駆使する主人公・アクセルの存在です。

彼らの任務は、人類を死の運命から救い出すこと。
この戦いに必要なのは、銃や剣ではなく、動き・判断・信念。
極限状態の中で、ラザロたちは人間の本質を問う戦いへと挑んでいきます。

アニメ『ラザロ』のアクションが異次元な理由

ジョン・ウィック監督×MAPPAが生んだリアリティ

『ラザロ』のアクションは、単なるアニメの域を超えた“実写映画クラス”の迫力を持っています。
その理由は明白で、アクション監修に『ジョン・ウィック』シリーズの監督であるチャド・スタエルスキ氏が参加しているからです。

演出・構図・動作の“間”に至るまで徹底的にリアルが追求されており、視聴者はアニメであることを忘れるほどの没入感を味わえます。

静と動、実写さながらのカメラワークと演出

『ラザロ』では、派手な爆発や必殺技よりも、「どう動くか」「どう生き残るか」に焦点を当てたアクションが描かれます。
キャラクターの動きにはすべて意味があり、構図・ライティング・カメラの揺れなどが実写的な手法で演出されているのが特徴です。

アニメという枠を越えたリアルさと緊張感は、『ラザロ』がアクションアニメの新境地であることを証明しています。

アクセルが魅せる「逃げて勝つ」戦闘スタイル

戦うよりも“生き延びる”ことに特化した動き

主人公アクセルのアクションは、従来のヒーロー像とは一線を画すものです。
彼は力任せに敵を倒すのではなく、「逃げる＝戦術」として活用し、相手を翻弄します。

一見すると“逃げ腰”にも見える彼の動きは、実は状況を冷静に分析したうえでの最適な選択。
高所への飛び移り、壁を蹴っての反転、わずかな隙間をすり抜ける技術…それらが生存のためのリアルな戦闘手段として描かれています。

追跡と脱出のドラマがアクションの中核に

アクセルの戦闘シーンでは、一方的な勝利よりも、ギリギリの逃走劇にこそ魅力があります。
障害物を利用した回避、敵の裏をかくルート選択、空間把握力に優れた動き…彼の動きはパズルのような知性を含む戦術です。

単に敵を倒すためではなく、「どうやって生き延びるか」に重きを置いたこのアクションは、視聴者に新たな“強さ”の形を提示しています。

そもそもパルクールとは？技術・歴史・精神を解説

フランス発祥の“生存移動術”パルクールの歴史

パルクール（Parkour）とは、都市や自然の障害物を素早く、効率的に移動する身体技術です。
起源は20世紀初頭のフランス軍にあり、「戦場で生き延びるための実践的な身体訓練」から発展しました。

1980年代後半、ダヴィッド・ベルという青年が、父親の軍隊式訓練を基にパルクールを体系化。
やがて「Yamakasi」という集団を結成し、世界中にこの文化を広めました。

基本技術5選：ランディング・ロール・ヴォルト・ウォールラン・プレシジョン

パルクールにはさまざまな技術がありますが、代表的な5つを紹介します：

• ランディング：高所からの着地で膝への衝撃を最小限にする技術。
• ロール：受け身を取るように斜め前転して衝撃を分散。
• ヴォルト：片手・両手を使い、障害物を軽やかに乗り越える。
• ウォールラン：壁を駆け上がってジャンプする登攀動作。
• プレシジョン：狭い足場に正確に着地する精密ジャンプ。

これらの技は、ラザロのアニメシーンでも随所に活かされています。

競技ではなく哲学：強く、有用であれ

パルクールはスポーツ競技ではなく、「自分のための移動術」であり、同時に哲学でもあります。
モットーは「Être fort pour être utile（強く、有用であれ）」。

これは、鍛えた身体を他人のために役立てるという価値観であり、パフォーマンスではなく実用に重きを置いています。
『ラザロ』のアクセルの動きには、この思想が色濃く表現されているのです。

『ラザロ』に見る“動きのデザイン”と映像美

アニメーションとモーションキャプチャの融合

『ラザロ』では、2Dアニメとモーションキャプチャ技術が高次元で融合しています。
キャラクターの動きはリアルな人間の筋肉や重力感を意識しており、まるで実際に撮影された映像のような滑らかさを実現。

これにより、パルクールの「動きの流れ」や「身体の連動性」が、他のアニメとは一線を画すレベルで表現されています。

動きに個性を宿すMAPPAの演出力

制作を手がけるMAPPAは、キャラクターの動きひとつひとつに個性を与えることで定評があります。
『ラザロ』でも、アクセルはしなやかで跳ねるような動き、対する他キャラは重くて直線的な動き…といった「動きによる性格描写」が細かく仕込まれています。

背景美術やカメラワークとの連動も見事で、「動き」そのものが視覚芸術として成立しているのが本作の凄さです。

アクションを通じて描かれる“強さ”の本質

強さとは力ではなく、選択と覚悟の連続

『ラザロ』が描く“強さ”とは、ただ敵を倒すパワーのことではありません。
アクセルのアクションには常に、「どう動くか」「どう生き延びるか」という選択が重ねられています。

それは、「戦うことを選ばない勇気」や「背を向ける決断」こそが真の強さである、という価値観。
暴力の連鎖から抜け出し、生き抜くことを選んだアクセルの姿は、視聴者に静かな感動をもたらします。

視聴者の憧れと共感を誘う身体表現

本作のアクションが心に残る理由は、ただ“かっこいい”を超えた共感性にあります。
絶体絶命の状況で次の一手を読み、環境を味方にする彼の動きには、「自分ならこう動けるだろうか？」と想像させる現実味があります。

アクセルは決して超人ではなく、「極限下で判断を誤らない人間」として描かれています。
だからこそ、彼の動きは“憧れ”だけでなく“自分にも可能かもしれない”という希望すら感じさせるのです。